2023/03/27

薄明り


 埃っぽい崖の下で横たわっている。頭ががんがんして、頬骨は左右の高さが違うし、右足首なんか変な方向に曲がってる。左足は感覚がなくて暗くてよく見えない。違うな、目がよく見えてないだけだ。


 なんでこんなことになってるんだっけ?いつもと同じように学校帰りに教会に隠れて、バレエ教室をサボって時間が過ぎるのをやり過ごしていただけだ。小さな、それでも確かで熱心な祈りに支えられた教会は、マリア像の口が裂けていた。


 踊ったり、飛び跳ねたりしている間だけは、すべてを忘れられたし、私は世界じゅうの時計の針を止めることができた。

 間違いなく私は幸福であった。


 でも、それは私がほしいものではなかったのだ



 崖の下で横たわっているあいだ、ずっとあなたのことを考えていた。小夜鳴鳥のさえずりが夕闇に消える。