2014/11/08

おいで、いっしょに踊ろう

社会の荒波というやつに揉まれてどうしようもない時に自分を守るのは自分だけなのだ。過不足のない生活の箱、拭き損ねたままの調味料のしみ、化粧水の仄かな香り、タオルケット。世界はここだけ、この私が腕を広げて指先の届くまで。遠く遥か薄く連なる山々も、風に煽られて無様に墜ちゆく海猫も、高層ビルディングも、あれは全てお前のものではない。そこにあるだけで、関係がないのだ。気のせいなのだ。 私が世界を完結させている。誰かに頭を撫でられた記憶も、ぎこちない触れ合いのうちに見つけた親愛も、希望、夢、未来、愛、すべて、そんなものは初めからなかったのだ。 だから子どもは早く家に帰りなさいと、夜に外をぶらつくんじゃないよと大人たちは言う。若いうちにもっとひとりでいなければならない。孤独に慣れて、これが正しいのだと知らなければいけない。これからずっとずっとお前はひとりぼっちなのだから。気が遠くなるくらい、長い間。