私は金持ちの家の子になっていた。しかしそこの家の実の子というわけではなく、どうやら貰われっ子らしい雰囲気がしていたが、詳しくはわからない。良家の子息子女が通うという学校に私も通っている。そこの文化祭は仮装でめいっぱいめかし込んでダンスパーティーに参加するものらしく、ここまでの設定は『キャンディ・キャンディ』の五月祭のあたりを読んでいただければイメージが湧くだろう。
私はその祭りのにぎわいをどこか高いところから見てみたいと思い、こっそり校外へ出て街中をほっつき回る。人がほとんど歩いていない住宅街を非日常極まりない格好で歩き、セキュリティのゆるいマンションを2つ見つけた。右手にあるのは入口の両脇にシーサーのようにムッシュ熊雄のぬいぐるみが配置されているマンション、左手にはごく普通の、テラコッタ色のマンション。私は左手のテラコッタ色マンションを選んだ。エレベーターに乗り込んで最上階のボタンを押す。8階でドアが開く。エレベーターのドアが個人の部屋の玄関であるようなつくりになっていて、エレベーターを降りたらもうそこは誰かの部屋なのだった。奥に大きな大きな窓が開かれていて、半透明の白のカーテンが舞っていた。そこからの眺めは最高で、8階のはずなのに何十階ぶんもの高さがあり、街を一望できた。ダンスパーティーでにぎわう学校は本当に小さかったけれど、目的を果たして満足した私は戻ろうと回れ右をする、と、男がいる。よく見てみるとこれがひどい振り方をした元恋人で、うっかり彼の家に入ってしまったということらしい。向こうも憎たらしい女がどうしたわけか自分の家に不法侵入しているのに気づいたらしく、もうものすごい顔をした。
フィクションや都市伝説の世界ではエレベーターに乗り込んで逃げると碌な目に遭わないので、階段を通って下へ下へと逃げて行った。この時の私がとにかくとにかく絶叫しながら走るのだけど、あまり叫ぶので息切れがして酸欠状態でフラフラしているし、しかもよくわからない仮装のままなので、傍から見ると追いかけてくる男よりも私のほうが変質者に見える。いま思うと実際に叫んでいたんでないかなあと思うくらい叫んでいた。何とかマンションの外に出たら、今度は目がよく見えない。コンタクトレンズをしていないので視界が悪く、逃走には不向きなので、たまたま持っていたレンズを装着しようとする。ところでこの夢の世界では魚の切身で手を拭くと殺菌効果があることになっていて、私は魚を触ってからコンタクトレンズを装着している習慣になっていた。通りがかった魚屋に飛び込んで身を潜めながら、いつも使っている鯖の切身を探す。鯖はあったが高騰していて金が足りなかったので、仕方なく赤魚で妥協するか、と考えたあたりで目が覚めた。