私は高校生だった。卒業した学校の制服が学年ごとにリボンの色が変わるシステムだったのだけど、その色が赤だったので私は1年生だった。教室は記憶よりもやたらと日当たりが悪くて、廊下側なんかじめじめとしていた。
オカルトや都市伝説の類をたいそう好む私であるけれど、占いは毛嫌いしている節がある。エゴサーチ的にはしばしば自分を占いにかけることはあれど、雑誌の特集や有料コンテンツなど女性向けのコンテンツとしてビジネスと結び付いたものが苦手で、うんと遠ざけておきたくなる。夢の世界にも携帯向けの占いサイトがあって、そのサイトには幾人かの占い師が在籍していて、そのうちのなんちゃらポーリーヌという占い師のページを見ていた。そこには会員登録をすると書き込める掲示板があって、私はそこに隣のクラスの女がいるのを見つけた。おそらく学年の女子のなかで一番太っていて、脚が丸太のように太く、地味な女だった。夢の中の私はびっくりするくらいに意地悪なやつで、ポーリーヌに心底陶酔しているらしい彼女を馬鹿にするためだけにそのサイトに登録し、掲示板にいくつかのレスポンスを投稿した。隣のクラスの人間であることをほのめかして。翌日彼女は息を切らせて私のクラスにやって来て、ニコニコしながらまっすぐに私のもとへ来て言う。「ポーリーヌからのお告げはもう受け取りました?」。ああこの女はいよいよ頭がおかしいのだと気味悪く思うと同時に嘲笑がこぼれ出て、ひどい言葉で彼女を罵倒した。
その夜から私は悪夢を見る。出てくるのは決まって10歳くらいの、イギリスの寄宿学校にいそうな格好の金髪の坊やで、彼が塔の上から転落したり手にひどい火傷を負ったり、毎晩私の夢のなかでむごい死に方をし、そして次の晩にまた別の死に方をする。私は隣のクラスの女が馬鹿にされたことを根に持って、ポーリーヌにでも頼んで呪いでもかけているのだと思い込み、彼女を問い詰めた。すると彼女は冗談みたいにきょとんとした顔で、「何のことですか、ポーリーヌって誰ですか」と言った。この女またさらに頭がおかしくなっているぞ!と私は激昂して彼女のはち切れそうなブラウスの首元を掴んで巨体を揺さぶって、もう恫喝としか呼べないような所作で彼女に当たり散らすのだった。しかし何を言っても彼女は泣きそうな顔で何もしていないという、それどころかポーリーヌのことさえ知らないという。
その占いサイトのユーザーだというクラスメイト数人に訊いてまわったところ、そのサイトは確かに存在するけれど、ポーリーヌという占い師はいないという。そんなはずはないと思ってサイトにアクセスすると、デザインも内容も記憶とまるっきり違っていた。ポーリーヌなんていなかった。ポーリーヌとは誰だったのだろう。