小学校の体育館の隅っこで、小太りの老人と新聞紙で兜を折っていた。トイレに近いうえに日当たりがよくないので、じめじめとしていて居心地はひどいものだ。壁に備え付けられた暖房を囲う鉄格子に背中を預けて、(現実ではこれっぽっちも折れない)兜を折っている。
その老人はごま塩を振ったような頭をしていて、もみあげと髭の区別が判然としない容貌をしていた。彼はサッカーのディフェンスについての蘊蓄を、ときおり唾を飛ばしながら語り続けてくるのだった。私はサッカー観戦はするけれどもルールにけして明るくないので、わかるようなわからないような、曖昧な相槌が鼻から抜けていくのに任せている。
新聞のインキで手のひらが黒ずみ始めたころ、私は紙面に見知った顔を見つけた。丸抜きのその顔写真は高校の同級生のもので、記事を読むとどうやら逮捕されたらしい。通りすがりの女子中学生に「わあ、ひどいぶす」「ねー、あれはないね」などと、あの年代特有の陰湿さでもって囁かれたのだそうで、かっとなった彼女は持っていたカッターナイフでふたりを切りつけたとのことだった。
夢からはみ出した膿は少し気持ちが悪い。