11月13日の夢
そこは海中で営業している美容院で、潜水艦のように二重になった丸く瓶底のような窓から海のようすが見える。薄桃色のタツノオトシゴや珊瑚から小さな気泡が漏れ出ていて、海藻がゆらめいているのが艶めかしいなと思っていた。この美容院の床はチェスボードのようにモノトーンのタイルで、海水が浸みているのか薄く水を湛えているので滑りやすく危なかった。ここは海底にあるのだろうなと何となく思いながら、重役の椅子のような粘っこい黒革のシャンプー用チェアにのっしりと私は沈んでいた。
たまにオニオコゼのような決して美しいとはいえない魚を見かける、美容院のなかで、水浸しの床で、二重窓の向こうの海に。このあたりの海域には密漁者がいるために万引きGメンよろしく覆面の保安官が見回っており、密漁者たちは見つかったら最後、この醜い魚の姿にされてしまうのだという。この店内にこの魚がいるということは、密漁者も髪型を気にするし、また保安官たちも髪型を気にするし、そんな両者がここで出会ってしまった結果がこれなのだなあと思っていた。私は美容院で髪をいじってもらうこともなく、粘っこい黒革のチェアに行儀悪く跨って足をぶらつかせていただけだった